ASPIREプロジェクト 概要
本研究プロジェクトは、日本において目覚ましい発展を遂げてきたスピントロニクス、特にスピン流に関する基礎および応用研究を出発点とし、電荷・スピンに加えて軌道、スピン波(マグノン)、フォトン、フォノンといった多様な量子力学的自由度を、角運動量を担う準粒子として捉え直すことを基盤としております。これらの準粒子は相互に変換可能であり、その過程を探究する「スピン変換科学」は、新たな学術領域として発展しつつあります。さらに近年では、異種準粒子が結合した特異な状態である「キメラ準粒子」の存在が明らかになり、それを対象とした新たな学術変革領域研究も立ち上がっております。

本プロジェクトでは、こうした準粒子がもたらす電荷流、スピン流、軌道流、マグノン流、フォノン流といったスピントロニクス現象に着目し、それらのダイナミクスや量子伝導、超伝導、磁性との相互作用に起因する新奇な量子効果について、フランス側の研究チームと包括的に共同研究を進めてまいります。具体的には、従来の日本・フランス間の連携研究およびフランスの国家プロジェクトPEPR-Spinとの連携を基盤とし、「軌道流の生成とその検出技術の開発」「パルス表面弾性波(SAW)による準粒子搬送と量子スピントロニクス材料・ナノ加工プラットフォームの構築」「キメラ準粒子を用いた新機能の創出」の三本柱を中心に研究を展開いたします。これらの研究テーマは相互に補完関係にあり、最終的には量子技術と融合した新たな学術領域である「量子スピントロニクス」への発展を目指しております。

この目標達成のため、日本側では東京大学物性研究所に新設された量子物質ナノ構造研究ラボ(量子ナノラボ)を中核拠点とし、製膜、素子作製、測定、解析に至るまでの一貫した研究体制を構築しております。一方、フランス側では、パリ・サクレー、グルノーブル、マルセイユの三都市に拠点を設け、日本側の東京大学物性研究所および大阪大学と連携し、理論・実験の両面から共同研究を推進してまいります。また、フランスからの研究者受け入れと日本人研究者の現地派遣を相互に進める連携拠点を構築し、若手研究者や大学院生を含めた双方向の頭脳循環と研究交流の活性化を図ってまいります。

本研究では、6つの具体的な研究課題を「軌道」「量子」「キメラ準粒子」の三つのテーマに分類し、順次取り組んでまいります。「軌道」ではスピンおよび軌道の伝導現象、ダイナミクス、集団励起に関する理論研究を進め、「量子」では量子伝導現象を中心に扱い、「キメラ準粒子」では表面弾性波(SAW)とスピン・電荷相互作用およびマグノン・フォノン結合に焦点を当ててまいります。とりわけ、「軌道」および「キメラ準粒子」にまたがる研究テーマにおいては有機的な連携を図り、スピントロニクス分野における新奇な量子伝導現象の開拓と、その応用可能性の探求を目指してまいります。
組織図
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