ASPIREの支援を受け、2025年4月16日から7月9日までの約3か月間、フランス・グルノーブルにあるSpintecに滞在しました。
私はこれまで原子層物質を用いたスピン輸送測定に取り組んできましたが、今回の滞在では、その実験結果のシミュレーションによる解析と、Fe3GeTe2薄膜の分子線エピタキシャル成長について学びました。シミュレーションに関しては、専門家であるAlain Martyさんと議論を行い、具体的な助言を受けながら解析を進め、納得のいく結果を得ることができました。
分子線エピタキシャル成長に関しては、膨大な条件最適化の過程を学び、Fe・Ge・Teの3元素を制御するために合計6つの温度パラメータを制御する難しさを理解しました。私は普段容易に作製可能な原子層薄膜を扱っているため、一つの物質を成膜することの難しさを改めて実感するとともに、原子層薄膜を成膜することに対する彼らの思いにも触れることができ、研究に対する視野を広げるきっかけとなりました。
滞在中には、毎週開催されるSpintec全体のセミナー(約50名規模)に参加し、幅広い研究内容に触れることができました。自身の研究について簡単に紹介する機会を得たほか、積極的に質問することで議論に参加できたことも貴重な経験でした。さらに、Spintecには国籍やバックグラウンドの異なる学生が多数在籍しており、ヨーロッパのみならずアジアや南米出身の学生とも交流しました。多くの学生がMRAMなど応用寄りの研究に取り組んでおり、議論を通じて物性物理の基礎が応用研究に直結することを再認識しました。研究議論に加え、アクティビティや昼食時の何気ない会話を通じて交流する機会もあり、多様な文化や考え方に触れることができました。週末には、ヨーロッパの各地を訪れ、滞在を満喫することが出来ました。
限られた期間ではありましたが、研究成果と新たな知見の獲得に加え、国際的なネットワークや異文化理解の面でも大きな収穫がありました。このような貴重な機会を下さったことに心より感謝申し上げます。
大阪大学理学研究科物理学専攻 D3 中村瞭弥 (NAKAMURA Ryoya)


