ASPIREの支援を受け、2025年5月15日から6月17日までの約1か月間、フランス・マルセイユにあるAix-Marseille Universityに滞在しました。私はこれまでカイラルフォノンに関する研究に取り組んできましたが、今回の滞在ではCINaMのAurelien Manchon先生と議論を行い、カイラルなフォノンモードと軌道流との相互作用に関する新しい理論研究に取り組みました。
滞在初週は研究の方向性について相談しました。Manchon先生のグループでは軌道流の研究が盛んに行われており、私自身はこれまでカイラルフォノンの理論的研究に携わってきたことから、この二つを組み合わせることで新しい知見を得られる可能性があると考え、研究に取り組み始めました。その後は週に1回程度のペースで対面の議論を行い、毎回進捗を整理して臨みました。議論の中では、物理的解釈の妥当性や実験的に実現可能な系の提案など、幅広い観点から助言をいただき、それを踏まえて解析を進めました。その結果、軌道流とカイラルフォノンの結合を理論的に導出することに成功し、数値計算や物理的な解釈も含めて一定の成果を得ることができました。現在は論文化に向けて追加の計算や考察を行っており、滞在後もオンラインで議論を継続しています。短い期間ではありましたが、研究に対する姿勢やアプローチの仕方など、多くを学ぶことができました。
日常的な研究活動は、CPTのThierry先生の研究室に所属する形で行いました。大学は自然豊かな山の中に立地しており、研究の合間には周囲のハイキングコースを歩いて気分転換をしました。大学から3kmほど離れた岬からは地中海を一望でき、研究生活の中で自然の美しさに触れることができたことも印象深い経験でした。滞在終盤にはThierry先生に夕食会へ招待いただき、研究室のメンバーとともに楽しいひとときを過ごしました。ワインや料理を囲みながらの会話は、研究室内での関係をさらに深める良い機会となりました。
全体を通して、研究面においては新しい成果と国際的な共同研究につながるきっかけを得ることができ、生活面においても多様な文化や価値観に触れることができました。短期間ながらも大変刺激的で有意義な滞在であり、研究者としての視野を広げる大きな一歩となりました。このような貴重な機会を与えてくださった関係者の皆様に心より感謝申し上げます。今後は、この経験を生かして研究活動をさらに発展させ、国際的な共同研究にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。
東京大学物性研究所加藤研究室D3佐藤哲也(SATO Tetsuya)


